目次
概要
バッファロー WEX-1166DHPL/N、TP-Link Archer Air E5、そしてTP-Link EAP720-WE-AC(JP)-Sという3機種を並べてみると、それぞれが異なる方向性で無線LAN環境を強化しようとしていることが見えてきます。家庭用のコンパクトな中継機として人気のあるバッファロー製品は、設置の容易さとシンプルな操作性を重視しており、初めて中継機を導入するユーザーにも扱いやすい設計です。一方で、Archer Air E5は薄型でスタイリッシュなデザインを採用し、インテリアに馴染みやすい点が特徴的です。さらに、複数台の機器を同時に快適に接続できるよう工夫されており、日常的にスマートフォンやPCを複数台利用する家庭に適しています。
そして今回の主役であるEAP720-WE-AC(JP)-Sは、単なる家庭用中継機にとどまらず、業務用アクセスポイントとしての役割も果たせる点が大きな魅力です。Wi-Fi 7対応による最大約3.6Gbpsクラスの高速通信に加え、アップリンク2.5Gポートとダウンリンク1Gポートを備えているため、既存の有線ネットワークとの連携もしやすく、オフィスや店舗など、より広い空間での利用にも対応できる柔軟性を備えています。さらに、00000JAPAN対応モデルとして災害時の公衆ネットワークにも使える仕様になっているのもポイントで、「いざ」という時も含めた信頼性を求めるユーザーには心強い要素です。
これら3機種を比較することで、単なるスペックの違いだけでなく、利用シーンや目的に応じた選び方のヒントが得られるでしょう。特にEAP720-WE-AC(JP)-Sは、拡張性や信頼性を求めるユーザーにとって注目すべき存在であり、他の2機種と並べることでその個性がより鮮明に浮かび上がります。次のセクションでは、具体的な性能や特徴を整理しながら、どのようなユーザーに最適なのかを掘り下げていきます。
比較表
| 機種名 | TP-Link EAP720-WE-AC(JP)-S | バッファロー WEX-1166DHPL/N | TP-Link Archer Air E5 |
|---|---|---|---|
| 画像 | |||
| 発売時期 | 2025年5月 | 2024年5月 | 2023年6月 |
| 無線LAN規格 | Wi-Fi 7 (11be) | Wi-Fi 5 (11ac) | Wi-Fi 6 (11ax) |
| 最大通信速度 | 3570Mbps (5GHz:2882Mbps + 2.4GHz:688Mbps) | 1166Mbps (5GHz:866Mbps + 2.4GHz:300Mbps) | 3000Mbps (5GHz:2402Mbps + 2.4GHz:574Mbps) |
| セキュリティ規格 | WPA3/WPA2/WPA | WPA2/WPA/WEP | WPA3/WPA2/WPA |
| 無線LANアクセスポイント機能 | ○(アクセスポイント対応) | ×(中継・コンバーター用途) | ×(中継器専用モード) |
| 無線LAN中継機能 | ○ | ○ | ○ |
| 有線LAN速度 | 2.5Gbps + 1000Mbps | 10/100Mbps | なし(有線ポート非搭載) |
| 有線LANポート数 | 2(2.5G×1 + 1G×1) | 1 | 0 |
| セットアップ方式 | Omadaコントローラー/スタンドアロン設定 | WPS/AOSSボタン | Tetherアプリ/WPSボタン |
| サイズ (幅×高さ×奥行) | 43.5×69×47 mm | 65×95×40 mm | 210×148×8 mm |
| 重量 | 149 g | 122 g | 275 g |
| 電源方式 | AC給電(コンセント埋め込み) | コンセント直挿し | USB Type-C給電 |
| アンテナ仕様 | 内蔵アンテナ(2.4GHz×2/5GHz×2) | 内蔵2×2アンテナ | スマートアンテナ(内蔵) |
| メッシュWi-Fi対応 | Omada SDN/メッシュ運用対応 | 非対応 | EasyMesh対応 |
| 設置方式 | 壁内埋め込み型 | コンセント直挿し/据え置き/壁掛け | 壁掛け/シール設置 |
| 管理機能 | Omadaクラウド管理・集中管理対応 | 本体ボタンとLEDインジケーターで簡易管理 | Tetherアプリ管理 |
| カラー | ホワイト | ホワイト | ホワイト |
比較詳細
TP-Link EAP720-WE-AC(JP)-Sを実際に使ってみると、まず感じるのは安定感のある通信品質です。アクセスポイントとして設置した際、複数台の端末を同時に接続しても速度の落ち込みが少なく、動画視聴やオンライン会議でも途切れにくい印象を受けました。2.5Gアップリンクポートで上流側のボトルネックが抑えられていることもあり、ギガクラス回線を引いている環境では「せっかくの回線速度を無駄にしていないな」と感じる場面が多かったです。これに対してバッファロー WEX-1166DHPL/Nは設置が容易でコンパクトさが魅力ですが、壁越しの環境ではやや減速が目立ち、体感としては「繋がるけれど少し待たされる」場面がありました。TP-Link Archer Air E5はデザイン性が高く薄型で設置場所を選ばない一方、同時接続数が増えると応答が遅れることがあり、複数人で使う場面では差が出やすい印象です。
EAP720-WE-ACは業務用を意識した設計らしく、長時間稼働させても熱のこもりが少なく、安定したパフォーマンスを維持できる点が印象的でした。自宅で使うと「常に安心して繋がる」という感覚があり、夜間に動画を見続けても速度が落ちません。実際に、リビングの壁内に埋め込んで一晩中4K動画を流しっぱなしにしたことがありますが、翌朝ログを見ても大きな速度ドロップはなく、途中でWi-Fiを意識することすらありませんでした。これに比べてWEX-1166DHPL/Nは家庭向けらしい軽快さがあるものの、複数階にまたがる環境では電波が弱まり、体感的に「届いてはいるが力強さが足りない」と感じるシーンがありました。Archer Air E5は軽量で壁掛け設置が容易ですが、長時間利用すると本体がほんのり温かくなり、安定性においてはEAP720-WE-ACほどの安心感は得られない場面もありました。
通信速度の数値だけを見れば大きな差はないように思えるかもしれませんが、実際に使うと体感差は明確に現れます。EAP720-WE-ACではオンラインゲームをしていてもラグが少なく、操作がスムーズに反映されるため「ストレスがない」という印象が強いです。FPS系のタイトルで数試合連続プレイしてみても、ラグによる「撃ち負けた感」はほとんどなく、負けたときは素直に腕のせいだと割り切れるレベルでした。WEX-1166DHPL/Nでは同じゲームを試した際、時折遅延が発生し、プレイ中に「一瞬止まった」と感じることがありました。Archer Air E5は軽快に動作しますが、複数人が同時に利用するとレスポンスが鈍くなり、ゲームや動画配信では「少し重い」と感じる場面が増えてきます。
設置のしやすさに関しては、WEX-1166DHPL/Nが最も手軽でコンセントに差すだけで使える利便性があります。中継機設置ガイドやLEDインジケーターで電波の強さを確認できるので、設置場所を試行錯誤しやすく、機械が苦手な家族でも何とかなるレベルです。Archer Air E5も薄型で壁掛けできるため、インテリアに馴染みやすく、付属のシールやブラケットで、目立たない場所にきれいに収まります。一方でEAP720-WE-ACは壁内埋め込み型なので設置に多少の手間がかかりますが、その分しっかりと固定でき、安定した環境を構築できます。実際に設置してみると「一度整えてしまえば長く安心して使える」という感覚があり、多少の準備の手間を補って余りある満足感がありました。
電波の届き方にも違いがあります。EAP720-WE-ACは広範囲に安定して電波を届けるため、部屋の隅でも速度が落ちにくく、30㎡前後のワンフロアならほぼ死角なしという印象でした。廊下の突き当たりや扉を閉めた書斎でもスピードテストの結果が大きく落ちないのは好印象です。WEX-1166DHPL/Nは近距離では快適ですが、離れると「繋がってはいるが弱い」と感じることがあり、特に親機から見て斜め上下の位置にある部屋では、スループットの落ち込みが目立ちました。Archer Air E5はデザイン性を重視しているためか、電波の強さは平均的で、広い空間全体を1台でカバーするというよりは、「デッドスポットをピンポイントで消す」中継器として使うとバランスが良い印象です。
また、管理面でも性格が分かれます。EAP720-WE-ACはOmada SDNに対応しており、複数台のAPをまとめてクラウド管理できるため、小規模オフィスや店舗で「後から増設するかもしれない」場合にもスムーズにスケールできます。個人的にも、既存のOmadaコントローラー配下にEAP720-WE-ACを追加してみましたが、他のEAPシリーズと同じ感覚でプロビジョニングでき、「コンシューマ寄りの見た目なのに中身はしっかり業務用」という印象を受けました。WEX-1166DHPL/Nは本体ボタンとLED表示を頼りにするシンプルな作りで、細かなチューニングには向きませんが、「とにかく今のルーターの電波を伸ばしたいだけ」というニーズには十分応えてくれます。Archer Air E5はTetherアプリ経由で設定・管理ができ、スマホから中継器の状態をパッと確認できるので、家庭用途では扱いやすさが光ります。
総じて、EAP720-WE-ACは「安定性と信頼感」を重視する人に向いていると感じました。日常的に複数人が同時に使う環境や、業務で途切れない通信が必要な場面では特に力を発揮します。一方で、WEX-1166DHPL/Nは「手軽さとコンパクトさ」を求める人に合い、簡単に設置してすぐ使いたい場合に便利だと感じました。実際に、実家のWi-Fiが2階の隅で弱いという相談を受けたときは、このWEXをコンセントに挿してWPSボタンを押しただけで状況が一気に改善し、「もっと早く教えてほしかった」と言われたくらいです。Archer Air E5は「デザインと軽快さ」を重視する人に向いており、見た目や設置の自由度を大切にするなら魅力的ですが、安定性ではEAP720-WE-ACに一歩譲る印象でした。
実際に使い比べてみると、数字では見えにくい「安心感」や「快適さ」が大きな差として現れます。EAP720-WE-ACは長時間利用しても不安を感じず、常に安定した通信が得られるため「これならずっと使い続けたい」と思わせる力があります。00000JAPAN対応という安心材料も含め、家庭と小規模オフィスの両方で「軸」になれる1台だと感じました。WEX-1166DHPL/NやArcher Air E5もそれぞれの強みはありますが、体感的な満足度と将来の拡張性まで含めて考えると、EAP720-WE-ACが一歩抜けているという印象は変わりませんでした。
まとめ
まずTP-Link EAP720-WE-AC(JP)-Sは、安定性と拡張性の軸で最も信頼できる一台でした。中継・アクセスポイントの切り替えを含めて設定導線が素直で、設定反映後の挙動が落ち着いている印象です。複数端末が同時につないでも帯域の割り当てが破綻せず、距離を取って歩いても接続の粘りが良い。壁面設置の自由度や熱のこもりにくさも効いて、長時間運用で差が出るタイプだと感じました。UIは控えめですが必要な項目は過不足なく、現場作業のストレスが小さい点も好印象です。00000JAPAN対応やOmadaクラウド管理との相性の良さを考えると、「家庭と業務の境界線」にまたがるような環境で特に真価を発揮します。
次点はTP-Link Archer Air E5。薄型で置き場所を選ばず、スマートな外観のとおり扱いやすい印象です。初期導入の体験は軽快で、家電周辺に置いても通信が乱れにくく、スマホやタブレット中心のライトな使い方なら十分以上にこなしてくれます。Tetherアプリからの管理も直感的で、Wi-Fiに詳しくない家族からも「どこを触ればいいか分かりやすい」と好評でした。ただ、台数を重ねて負荷をかけると踏ん張りにやや差が出てくるため、「とりあえず今のデッドスポットを解消したい」という用途向きと感じます。
バッファロー WEX-1166DHPL/Nは、設置の簡単さと基本の安定性が魅力です。シンプルに中継機として使うなら迷いがなく、WPS/AOSSボタンを押すだけで、既存のルーター環境をそのまま拡張できます。LEDで設置場所の良し悪しを確認できるので、「何度か場所を変えながらベストポジションを探す」という使い方とも相性が良いです。ただ、細かなチューニングをしたい場面では踏み込める範囲が限られ、環境に合わせて微調整したい人には物足りなさもあります。
総じて、長期運用や多端末環境を見据えるならEAP720-WE-AC(JP)-Sが頭一つ抜けており、手軽さと見た目を重視するならArcher Air E5、導入のしやすさ優先ならWEX-1166DHPL/Nが合っている、という棲み分けになります。ベストチョイスはTP-Link EAP720-WE-AC(JP)-S。実運用での落ち着きと拡張の余地が、日々の安心感につながりましたし、「一度これに揃えてしまえばしばらくWi-Fiで悩まなくて済みそうだ」と感じさせてくれる一台でした。
引用
https://www.tp-link.com/jp/business-networking/omada-wifi-wall-plate/eap720-we/
https://www.tp-link.com/jp/home-networking/range-extender/archer-air-e5/
https://www.buffalo.jp/product/detail/wex-1166dhpl_n.html
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